| ●序 文 Preface | ||||
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この小冊子は、関節鏡手術を医師にすすめられた患者さんのために作られたものです。なるべく詳しく説明することを目指しましたので、少し専門的な言葉もあり、分かりにくいところもあるかもしれません。何か疑問に思うところや理解できないところがあれば遠慮せずに、北新病院の看護スタッフにお尋ね下さい。 | ![]() | ||
| ●関節鏡視下手術 Arthroscopy | ||||
| 1.関節鏡視下手術とは、膝関節内に異常が疑われる場合に、細い内視鏡(ボールペンの半分程の太さ)を関節の中に入れて、検査や治療を行う手術の事です。当院では、通常全身麻酔で行われます。 従来行われていた腰椎麻酔では頭痛などの合併症が多く、全身麻酔の方が術後快適です。ただし麻酔科医の判断により、腰椎麻酔になることはあります。 2.関節鏡手術には、次のような利点があります。 イ) 膝の前方の2箇所に1センチ弱の穴をあけるだけですので侵襲が非常に小さい。(創が小さく、体に対する負担が少ない) ロ) 正確な診断が可能。MRIだけでは診断できないこともあります。 ハ) 半月板断裂などに対して診断と同時に治療が可能です。但し、半月板縫合を行う場合には、膝の側面に2センチ程の小切開を加えることがあります。 ニ) 入院期間が短くてすむ。アメリカや日本の一部の病院では日帰り手術が行われています。当院では日帰り手術はまだ行っておりませんが、入院日数に関しては、患者さんの希望も聞きながら柔軟に対処しております。一般には1週から2週間の入院になると思います。 |
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| ●半月板 Meniscus | ||||
| 1.大腿骨と脛骨の間にある膝関節には、半月板と呼ばれる軟骨があります。膝の内側と外側に1個ずつあり、内側のものはC字型をしており内側半月板と呼ばれています。外側のものは環状をしており外側半月板と呼ばれております。内側半月板の後側の部分が、一番大きく、幅1.4センチ厚さ4.3ミリほどあります。硬さは、少し硬めの消しゴムほどあります。 2.半月板の役割は大きく分けて2つあります。 1)関節にかかる荷重による衝撃を吸収する。(ショックアブソーバーとして働く) 2)膝の安定性を確保する。 3.半月板は外周部にしか血液の供給がありません。血液の供給が無い部分で断裂した場合には自然に治癒することはありません。血液の供給がある部分が小さく切れた場合には、手術をしなくても膝を装具などで固定することにより治癒することもありますが、通常は関節鏡手術で治療を行う必要があります。 | ![]() | |||
| ●半月板断裂 1-1 Meniscal tear | |
| 1.半月板断裂を生じるメカニズムは3つあります。 | |
![]() 内側半月板弁状断裂 鏡視下 | A.外傷性断裂 下腿が固定された状態で、大腿が捻られるようなスポーツでは半月板断裂を生じる機会が増えます。(例えば、バスケットボール、サッカー、スキー等)また、膝の側面を強く打撲した時にも断裂が生じる可能性があります。 |
![]() 内側半月板変性断裂 鏡視下 | B. 変性断裂 半月板が老化して、水分を失い、弾力性や柔軟性を失っている状態では、ほんの小さな外傷により断裂が生じます。膝に疼痛を生じるような外傷の記憶が無い場合でも、断裂していることがあります。内側半月板の後側(後角部といいます)が複雑に切れている場合が多いです。 |
| ●半月板断裂 1-2 Meniscal tear | |
![]() 円板状半月板 と 縦断裂 | C.その他(円板状半月板) 新生児の半月板は、大人の半月板の様な三日月型ではなく、円板状の型をしています。成長の過程で、半月板の一部が吸収されて、三日月型の半月板が出来上がります。この吸収の過程が、何らかの原因で阻害されると、円板状の半月板の状態が持続し、6歳から8歳時に、膝を動かすとポキポキと音がしたりします。また、もう少し年長になると、膝の痛みや、引っかかり感が出現したりすることがあります。症状が強い場合には関節鏡手術が必要になります。円板状半月板の出現率は、アメリカでは5%、日本では16%程と言われています。ライフスタイルの違いによりこのよう数値の差が出ると言われています。 |
| ●半月板断裂の症状 Symptom of meniscal tear | |
| 1.半月板のみの損傷の場合には、通常は怪我をした当日は、あまり強く腫れることはありません。関節の間隙のある部分に痛みを感じます。翌日に軽い腫れが現れ、膝の曲げ伸ばしが困難になります。激しい外傷の場合には、疼痛や腫れが強く、診断が困難なこともあります。このような場合には、半月板以外の靱帯や骨や軟骨の損傷が合併していることがあります。 2.いろいろな動作で膝に疼痛を感じますが、寝ている時のような安静時にも疼痛が出現することもあります。膝の中で何かが挟まるような感じがしたり、立ち上がる時に膝がスムーズに伸びなっかたりすることもあります。半月板の切れ方が大きい場合には、膝が曲がったままになり、伸ばそうとすると激しい痛みが生じたりします(これをロッキングと言います)。また歩行中に膝の力が抜けてしまい、膝が折れてしまうこともあります。(これを、ギビングウェイと言います) | ![]() ![]() |
| ●MRIによる画像診断 1 | |
![]() | 水平断裂 T2画像による半月板の切れている様子が左の図の矢印部分で、 白くなって見えます。 ・正常な半月板は下図のように黒く見えます。 ![]() ・断裂している半月板は下図のように白くなって見えます。 ![]() |
| ●MRIによる画像診断 2 | |
![]() | 縦断裂 T2画像による半月板、左の図の矢印の部分が白くなり黒い部分が2箇所に分断され切れている様子が見えます。 ・正常な半月板は下図のように黒く見えます。 ![]() ・断裂している半月板は下図のように白くなって見えます。 |
| ●MRIによる画像診断 3 | |
![]() | バケツ柄状断裂 T2画像による半月板、左の図の矢印の部分が白くなり黒い部分が2箇所に分断され、切れている様子が見えます。 ・正常な半月板は下図のように黒く見えます。 ![]() ・断裂している半月板は下図のように白くなって見えます。 |
| ●MRIによる画像診断 4 | |
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円板状半月板断裂 T2画像による半月板、左の図の矢印の部分が白くなり黒い部分が2箇所に分断され、切れている様子が見えます。 ・正常な半月板は下図のように黒く見えます。 ![]() ・断裂している半月板は下図のように白くなって見えます。
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| ●治 療 1-1 Treatment | |
![]() ![]() | 1.半月板断裂と診断された場合には関節鏡手術が予定されます。手術は必ずしも、緊急性を必要としない場合もありますが、ロッキングやギビングウエイがある場合や、疼痛が激しい場合にはなるべく早期に行う方が良いと思います。 2.手術の数日前に外来で、血液検査や抗生物質に対するアレルギー反応を調べる検査を行います。通常は、手術の前日に入院します。 3.手術について担当の医師から説明があります。また麻酔科医と手術室の看護婦から麻酔の説明があります。8時間前から固形物は取れません。水分は4時間前まで許されます。 |
| ●治 療 1-2 Treatment | |
![]() | 1.理学療法士から手術後のリハビリについて説明と指導が行われます。 2.消灯前と手術室に入る2時間前に、睡眠薬と胃薬を飲む事になります。手術室に入ると、担当の看護婦がお迎えします。そのあと手術台に乗り、麻酔科医により麻酔が行われます。と言っても点滴から薬が注入されるだけです。手術は30分から1時間。縫合を行っても1.5時間程度です。 手術終了後、手術室で目が醒めます。個人差もありますが、3時間後には歩いてトイレに行く事ができます。 |
| ●治 療 1-3 Treatment | ||
| 1.半月板の断裂には、色々な型があります。 | ||
![]() 水平断裂 手術前 | ![]() 水平弁状断裂 手術前 | ![]() 半月板切除術 手術後 |
| ●治 療 1-4 Treatment | ||
![]() | 新鮮例 縦断裂 手術前(左図) 切除術 手術後(右図) | ![]() |
![]() | 新鮮例 バケツ柄状断裂手術前(左図) 切除術 手術後(右図) | ![]() |
![]() | 新鮮例 横断裂 手術前(左図) 切除縫合 手術後(右図) | ![]() |
| ●治 療 1-5 Treatment | ||
| 1.外傷性断裂で外周部の血行の良い部分で断裂している場合には、縫合術が行なわれます。 | ||
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半月板縫合 インサイドアウト 外側半月板断裂 術前(左図) 外側半月板縫合術 術後(右図) |
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| 2.半月板の縫合を行う場合には当院では通常、インサイドアウト法を行っております、この方法は、カニューラと呼ばれる曲がったガイドを使います。この中に糸の着いた長い針を通し、半月板に刺して膝の外側に引き抜いてから糸を縫い合わせます。糸が結べる様に膝の外に小さな切開を加える必要があります。縫合が成功するかどうかは、縫った部分の半月板が、それ自身治癒する能力を持っているかどうかによります。.縫合は、生物学的治癒過程が十分進むまで、断裂した半月板を合わせて、保持しておくだけなのです。 | ||
| ●治 療 1-6 Treatment | |||
| 3.中高年の患者さんに多く見られる変性断裂の場合には部分的切除術が行われます。半月板の切除はパンチと呼ばれる鋏のような器械や、シェイバーと呼ばれるカミソリと吸引器の付いたもの、ベイパーと呼ばれる軟骨や膜を焼き切る器械を使って行なわれます。 | ![]() 関節鏡挿入 | ![]() プローヴ使用 | |
![]() モリヤパンチ使用 | ![]() ベイパー使用 | ![]() シェイバー使用 | |
| ●術後 Postoperation | |
| 1.手術後はギプスシーネをつけます。通常1日か2日で取り外しますが、炎症の強い人,出血の続づく場合には数日間延期します。膝にはヘモバックと呼ばれるチューブが着いています。これは手術後に関節の中に血液が溜まって、疼痛が出現したり、感染の原因になることを防ぐ為に関節の中の液を吸入する道具です。通常2、3日で抜去します。 2.下肢は枕で高くしてあります。氷で冷やし、痛み止めを飲みます。 術後の痛みは個人差がありますので、坐薬、注射なども必要かもしれません。いずれにせよ早めに看護婦に伝えてください。 | ![]() ![]() ![]() |
| ●手術後のrehabilitation 1-1 Rehabilitation of postoperation 1.半月板の切除を行った場合には、手術後1~2日で体重を部分的にかける練習を始め、1週間以内で全ての体重がかけれる様に訓練します。手術後1~2日で、膝の曲げ伸ばしの訓練を始めます。同時に筋力訓練も始めます。半月板縫合を行った場合には、手術後1週間経ってから、体重をかけ始め、2週後に全体重をかけれる様にします。膝固定の装具を2週間使用し、その後膝の曲げ伸ばしの訓練を始めます。リハビリテーションは、理学療法士が指導します。 |
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| ●手術後のrehabilitation 1-2 Rehabilitation of postoperation | ||||
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| ●関節鏡手術の合併症 | |||
![]() | どのような手術にもリスクはあります。しかしながら関節鏡視下手術は安全な手術の一つです。一応、テキストに載っている合併症を列記します。 | ||
| ●合併症 には Complication | ||||
| 1.術後化膿性関節炎 どのような手術でも手術後の感染症が生じる可能性がありますが、関節鏡手術は常時、水で洗いながら行う手術ですので感染の可能性は非常に少ないと思います。 2.皮膚の神経損傷 皮膚には細い神経が走っています、この神経を損傷しますと、術後に創の周りの感覚が少し鈍くなったり、ビリビリしたりすることが考えられます。 3.術後腓骨神経麻痺 下肢を外旋しておくと膝の後外側にある腓骨神経が潰れて神経麻痺を起こすことがあります。 | 4.関節軟骨損傷 まれに手術器械により軟骨に小さな傷がつくことがあります。非常に浅い傷ですのであまり問題になりません。 5.術後関節血腫 術後は、ヘモバックのチューブが関節の中に入っていて血液を吸い出しますので普通はこのようなことは起こりませんが、滑膜切除を行った場合には、ヘモバックを抜いた後も出血が続き、関節の中に血液が溜まることがあります。注射器で何回か抜くとおさまります。 6.術後関節水腫 半月板の変性断裂の手術を行った場合には、まれに関節水腫が見られます。 | 7.血栓症 血液の塊がどこかに詰まることにより生じることが考えられます。 | ||
| 最後に当院では通常、医師2名、看護婦2名の医療スタッフにより関節鏡視下手術を行っております。 | ![]() |
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